2024.10.14
休眠抵当権抹消
昭和初期に設定された、債権額が数百円という抵当権の抹消登記のご依頼をいただいております。
本来は不動産の所有者と抵当権者とが共同で抵当権の抹消登記を申請しなくてはならないのですが、今回は抵当権者が個人で、設定登記をしてから既に90年近く経っており、現在の所在も死亡の有無も分からない状態です。
その場合、債権の弁済期から20年を経過した後に、元金、利息、債務不履行によって生じた損害の全額に相当する金銭を供託したことを証する情報を添付すれば、権利者が単独で抹消登記を申請することができる特例があります(不動産登記法第70条4項後段。以前は3項でしたが改正で変わったのですね…)。
被担保債権が数百円なので、ざっと計算をしたところ供託する金額は約5,000円ほど。ぜひともこの特例を使って抹消登記を申請したいところです。
供託にむけて現在準備中ですが、タイミングよく今週末に日司連の「休眠担保権等抹消の実務」という研修が開催されるようなので、そこでもしっかり知識を習得してきたいと思います。
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抵当権者の所在(行方)が知れないことがこの特例を使うためのそもそもの要件になるので、まずは登記簿上の抵当権者の住所に宛て、「受領催告書」を配達証明付郵便で出しました。
これが「宛て所に尋ね当たらず」や「宛名不完全」で差出人に返送されてくればそれを抵当権者の所在不明の証明とすることができます。なお登記簿上の住所が区画整理や町名変更、住居表示の実施により現在は変更していることが明らかな場合でも、受領催告書の発送先は90年前に登記がされた際の“登記簿上の住所”を記載すればよいので、郵便が抵当権者に配達される可能性はとても低いのではないかと思いました。
ちなみに抵当権者やその相続人がいまも当時のままの住所に住んでおり郵便を受け取った場合には、特例は使えずに抵当権は原則通り共同申請で抹消をすることになります。その場合にもし抵当権者の協力が得られなかったら…場合によっては訴訟になってしまうかもしれません。
ネットで調べたところ今回のこの登記簿上の抵当権者の住所はもう存在しなさそうなことが分かり、私はほっとしながら郵便局に向かいました。住所が存在しないということで郵便番号も空欄のままで。
すると郵便局の窓口の方が「ここは住所が〇〇に変更になっているので現在の郵便番号を入れてもいいですか?」と丁寧に調べて郵便番号を入れてくれたのです…
もしかすると現地の郵便局の方も、気を利かせて何とか配達しようと市町村合併の記録とか過去の転居届のデータとかいろいろ調べてくれたりするのかもしれない…届くかな……
と、急に気を揉みながら数日間過ごしたのですが、私が出した受領催告書は「宛名不完全」で(無事?)私のところに戻ってきました。これから供託をする日を決めて、供託金の額や供託書の記載方法について法務局と打ち合わせをさせていただく予定です。
こちらの本には大変お世話になっています。今は電子版しかないのかもしれません。