2024.12.27
昔の抵当権(いわゆる休眠担保)を消すために
一応の仕事納めである本日、法務局から連絡がありました。
法務局に照会をしていた休眠担保の件で、回答があったのです。
抵当権の抹消は、登記権利者となる不動産の所有者と、登記義務者となる抵当権者が共同して登記申請をするのが通常の方法なのですが、昭和初期に設定された抵当権のような場合には、抵当権者が行方不明になっていて登記申請に協力してもらうことができないということがあります。
そのようなときに『供託』という制度を使うことができる場合には、債権額に利息・損害金を加えた全額を供託し、その証明書を添付することで抵当権の抹消登記を登記権利者のみで単独申請できるようになるのです。
供託書を作成することは初めてでしたので調べながら、悩みながらの作業でしたが、登記と異なり法務局の供託課の方が電話で色々と打ち合わせや指導をしてくださいました(登記についての事前照会は電話ではNGです)。
供託をする金額もこちらで計算をして供託書に記載する必要があります。現在は弁済期は抵当権設定登記の登記事項ではありませんが、昭和39年4月1日より前に登記がされた抵当権は弁済期が登記事項となっていましたので、閉鎖謄本を取得することによって弁済期を確認することができます。
しかし私が最初に閉鎖謄本を取得したところ、弁済期はなぜか載っていませんでした。調べてみると、コンピュータ化に伴う閉鎖より前に、古くなってしまった用紙から新しい用紙に移し替える「粗悪移記」による閉鎖というものがありました。
粗悪移記をするときには抵当権の弁済期が登記事項ではなくなっていたので、新たな登記簿には弁済期の記載が省略されたということでしょう。そこで今回はコンピュータ化前の閉鎖謄本よりも前に遡って閉鎖謄本を取得しました。
粗悪移記がされているかどうかは、コンピュータ化前の閉鎖謄本の甲区1番に「法務大臣の命により順位〇番の登記を移記」と記載があるかどうかで分かるそうです。
そして今回は弁済期がちゃんと載っておりました。
弁済期:昭和拾壱年五月ヨリ昭和拾七年弐月迄 毎月末日限リ金五円償還 月賦返済ヲ怠リタルトキハ期限ノ利益ヲ失ヒ且月壱分弐厘五毛ノ損害金ヲ支払フ…
そして期限の利益喪失の特約がありました。期限の利益とは、一定の期日が到来するまでは債務を履行しなくてもよいという利益のことです。約束通りに弁済がなされない場合には期限の利益は喪失し、かつ上記のとおりの損害金を支払わなくてはならないとなっています。
そこでまずは借入年月日である昭和11年5月4日(借入日は登記されていなかったので抵当権設定年月日を使用)から最初の弁済期である昭和11年5月31日までの利息を計算します。利息は登記されていませんでしたので、年6%とみなして計算をします。
そして翌日からは期限の利益を喪失したとして、昭和11年6月1日から供託申請予定日である令和7年1月〇日までの遅延損害金を計算します。遅延損害金は月1分2厘5毛と登記されておりましたのでこれを用います。なおこれを年利になおした15%が当時の利息制限法に抵触していないかを確認することも必要で、抵触する場合にはそれぞれの時期に対応する利率に引き直して計算をしなくてはなりません。
金額の計算は法務省から無料で公開されているソフトがありますので、それを利用すれば簡単に計算できるのですが、どこにどの数字を入力すればいいのかが最初は分かりにくかったです。念のためソフトと手計算両方いたしました。
作成した供託書と対象不動産の閉鎖謄本、供託者からもらう委任状などを一式法務局にFaxして事前の確認をしてもらっていたのですが、下記について修正するよう指導をいただきました。
①供託書に記載した「抵当権設定者」の表示は、相続等によって所有者が変わっていたとしても、設定当時の不動産の所有者を記載すること。
②不動産の共有者のうちの1人から全額を供託する場合には、供託書の備考欄に、「他の供託者の持分については第三者弁済により供託する」と記載すること。
それ以外には特に大きな修正はないという回答を法務局からいただきましたので、これで安心して年末年始を過ごすことができそうです。
最後に備忘録として。
手持ちの参考資料等によると、供託の申請日と供託の委任状が供託所に届く日は必ず同じ日でなくてはならないと記載されておりました。供託書をオンライン申請し、遠方の場合には委任状は供託所に持ち込まずに郵送するため、到着する日にちがずれないように注意を要すると先日の司法書士会の研修でも習ったところでした。
しかし法務局の供託課の方に何度も(しつこく)確認をしたところ、供託申請をして5日以内に委任状が届けば大丈夫ということでした。扱いが変わったのかもしれません。
それに供託金の納付は供託申請をしてから一週間以内にすればよいそうです。
あと普段の登記実務と異なり不思議だったのが、特にこちらが還付を希望しなくても委任状は必ず返却されるということです。理由は「提示しか求めていないから」だそうです…
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10月に独立し、どうなるかと思っておりましたが、気づけば今年も終わろうとしています。
独立前からお世話になっている士業の先生方をはじめ、独立をしてから新たなご縁があった士業の先生方、不動産会社の方などから、ありがたいことにお仕事のご紹介をいただきました。
ありがとうございました。
来年は私も周りの皆さまに少しずつでもお返しをしたりご縁をお繋ぎできますよう、日々努力を重ねていきたいと思います。
実はプライベートでは前代未聞の恥ずかしいミスをしてしまった今日ですが(お会いした方は聞いてください…穴があったら入りたいとはこのことだと体感しました笑)、今年最後の営業日ですので気を取り直してこの記事を書きました。
どうぞ健やかに新年をお迎えください。
そして来年も宜しくお願いいたします。