木下尚子司法書士事務所 木下尚子 司法書士事務所

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お知らせ

2024.11.09

相続

自筆証書遺言のこと

以前記事に書いたように個人的には公正証書遺言がおすすめではあるのですが、自筆証書遺言についても少し触れてみたいと思います。

 

 

そもそも遺言とは、遺言者が自分の状況や家族構成に応じて、どの財産を誰にどれだけ承継させるかを決めることができるものです。

 

 

例えばお子様がいらっしゃらない方が亡くなった場合には、遺言書が無ければその配偶者と、亡くなった方の親や兄弟姉妹との間で、どうやって遺産を分けるかの話し合いをすることになります。

 

 

また相続人の中に認知症の方がいる場合には、症状によっては遺産分割の話し合い自体することができない場合もあります。遺言書が無ければ認知症の方のために成年後見人を裁判所に選んでもらい、成年後見人と相続人との間で話し合いをすることになります。

 

 

遺言書を残すことで、このような場合にも相続人間での協議を待たずに遺産を承継させることができ、相続争いを予防したり(遺留分の問題はありますがその話しはまた別のときに…)、相続人が困らないように対策をすることができるのです。

 

 

自筆証書遺言を作成するメリットとしては、いつでもどこでも作成ができ、費用もかからず、どのような遺言を書いたのかは秘密にできることです。公正証書遺言を作成する場合のような証人の立会いも不要です。

 

 

ただし必ず民法で定められた方法に従って作成する必要があり注意を要します。せっかく作成したのにいざ相続手続きをしようとしたら自筆証書遺言の要件を満たしておらず使えなかったということは、割りとあることなのです。

 

 

自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書しなければなりません(民法968条①)。パソコンで作成したり動画で作成することはできません。ただし平成30年の民法改正により『財産目録』だけは、パソコンで作成してそれを添付することも認められました(ただし財産目録に署名・押印は必要、民法968条②)。

 

 

簡単な文例をご紹介します。

 


 

遺言書

 

1.私は、私の所有する別紙財産目録1の不動産を、長男の甲野太郎(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。

 

2.私は、私の所有する別紙財産目録2の預金及びその他この遺言書に記載のない一切の財産を妻の甲野花子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。

 

3.私は、本遺言の実現のために、遺言執行者として前記甲野太郎を指定する。

 

令和〇年〇月〇日

 

住所  川崎市中原区小杉町二丁目276番地1

遺言者 甲野 一郎  印

 


 

上記を全てご自身で手書きして、印鑑を押印します。

 

 

文言の変更や追加がある場合には修正テープや砂消しなどを使わず、民法968条③に従った方法でのみ訂正することができるのですが、少しややこしいのでできれば最初から書き直すことをおすすめします。

 

 

なお上記3.の「遺言執行者」とは、遺言の内容を実現するために相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者のことです(民法1012条①)。遺言の執行は相続人自ら行うことを原則とするのですが、遺言の内容によって、また相続人間の関係性によって遺言の執行がスムーズに進まない事態に備え、信頼できる人を遺言執行者に指定しておくのが望ましいと思います。ちなみに遺言執行者は未成年者と破産者以外なら誰でも大丈夫ですので、相続人のうちの1人を選ぶことも可能です。

 

 

そして別紙の財産目録はパソコン等で下記のとおり作成をして、必ず【署名と押印】をします。

 


 

別紙 目録

 

1.所在 川崎市中原区小杉町二丁目

  地番 1番2

  地目 宅地

  地積 〇平方メートル

 

2.〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇

 

甲野一郎  印

 


 

 

不動産は、法務局で取得した登記事項証明書の記載のとおりにします。たまに「自宅の土地建物」とだけ記載して所在や地番、家屋番号の記載がされていない遺言書もありますが、このようなあいまいな表現では不動産の特定が出来ず、相続登記の際に法務局で受理してもらえません。

 

 

預貯金については上記のような特定の仕方で十分です。

 

 

遺言書の作成後、封入することは法律上必要ではないのですが、相続発生前に誰かに見られた場合に争いの原因になるといけませんので、封筒に入れて封印し、「遺言書」と表題を記載しておくのがよいと思います。日付や署名押印も必須ではありませんが、あると丁寧な印象になると思います。

 

 

そして遺言者の死亡後には、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、勝手に開封することはできず家庭裁判所に提出をして、「検認」の請求をしなくてはなりません。

 

 

検認とは、検認の日現在における遺言書の状態を明確にして、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きのことで、検認を経ないと相続登記や預貯金の解約等の手続きに、自筆証書遺言を使うことはできません。

 

 

この検認が必要な点が公正証書遺言との一番の違いだと思いますが、令和2年7月10日から、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が開始されています。法務局に預けることで遺言書の紛失や改ざん等のリスクが回避されますので、遺言書の検認手続きは不要となっています。

 

自筆証書遺言の作成を検討されている方は法務省のHPもチェックしてみてください。

 

 

 

食べる前の写真です。麻辣湯が大好きです。

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