2024.10.05
相続放棄について
最近、裁判所へ提出する「相続放棄の申述書」の作成のご依頼が立て続けにありました。
相続放棄とは、亡くなった人の財産(プラスの財産も、借入金などのマイナスの財産も)を相続人が一切受け継がないこととするための手続で、
基本的には相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、亡くなった人の戸籍等と相続放棄申述書を、亡くなった人の最後の住所地の管轄裁判所に提出する必要があります。
相続放棄をする前に、亡くなった人の現金・預貯金を使ってしまったり、価値のある遺品を持ち帰る、遺産分割協議をする、などをしてしまうと相続放棄ができませんので注意が必要です。
裁判所に申述書を提出してから2~3週間で裁判所から照会書(回答書)が送付されてくるのですが、そこには
・どのような理由で相続放棄をするのですか
・被相続人の遺産を処分したり消費したことはありますか
・相続放棄はあなたの意思によるものですか
などといった質問が書かれていて、回答を記入して期限内に裁判所に返送しなくてはなりません。
放棄をしたい理由は様々だと思いますが、生活が安定している、遺産を分散させたくない、債務超過のため、といったもののほかに、他の相続人と関わりたくない、被相続人と疎遠だったから、高齢だから、などの理由でも問題はありません。
回答の返送をしてから2~3週間で裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類が送られてきますので、それが届いたらお手続きは無事終了です。
なお、この「通知書」は相続放棄の証明になりますが1枚しか発行されませんので、相続放棄をしたことの証明書類の原本をどこかに提出する必要がある場合には、別途裁判所に「相続放棄申述受理”証明書”」の交付を請求します。
相続放棄をした人は、”その相続に関して初めから相続人とならなかったもの”とみなされます(民法第939条)ので、財産も債務も一切受け継ぐことはありませんが、死亡保険金や未支給年金、遺族年金や国民健康保険等から出る葬祭費などはそもそも相続財産ではないので、相続放棄をしても受け取ることができます。
また香典や仏壇、お墓、仏具などの祭祀財産も、慣習に従って祖先の祭祀を主宰する者が受け継ぐ(民法第897条)ので、相続放棄をしても問題なく承継することができるようになっています。
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余談ですが、以前一度だけ、裁判所から照会書が届かなかったことがあります。照会をするような事情が全くなかったということでしょうか。
富山の家庭裁判所でのことです。
放棄の申述書をこちらから裁判所宛てに発送し、裁判所から申述人の方に「相続放棄申述受理通知書」が届くまでになんと9日!
休日や郵送に要する日数を考えると、おそらく3~4日で申述が受理されたということですね。
こんなに早いのは初めてでしたのでとても驚きました。